2025年11月8日(土)、千代田区立お茶の水小学校にて、東京都一水会・東京都一水教育研究所 教育経営部主催の特別研修会に講師としてお招きいただきました。
「AIの進化に学校は、教員は目を覚まそう」をテーマに、小学校の校長・副校長・主幹教諭など、これからの学校経営を担う先生方 約50名を対象に、約100分お話しさせていただいた内容をご紹介いたします。

今回の研修会は「これからの学校経営を考える機会として生成AIに視点を充てる」という趣旨でご依頼をいただいたものです。つまり、担任の先生の業務効率化にとどまらず、学校という組織をどう舵取りしていくかという視点が求められる場でした。
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1. そもそもAIとは何か?――「知らない」を「触ったことがある」に変える

講演はまず、AIという言葉の定義を揃えるところから始めました。
AIとは、既存のデータに基づいて「分析や判断」を行うもの。そして生成AIは、テキスト・画像・音声など、様々な形式のコンテンツをゼロから作り出すことができるもの。この違いを押さえるだけで、ニュースで飛び交う情報の見え方が変わってきます。

AIと生成AIの違いを、定義から丁寧に。
続いて、学校現場で実際に触れる可能性が高い3種類のAIをご紹介しました。
- 対話型AI(ChatGPTなど):質問応答、文書作成、要約など、まるで人と話しているように自然な会話ができる
- 画像生成AI:テキストの指示から高品質な画像を生成し、教材やプレゼン資料のビジュアルを瞬時に作成できる
- 音声認識・翻訳AI:リアルタイムでの音声文字変換や多言語翻訳を可能にし、言語の壁を越えたコミュニケーションを支援する
ここで最も強調したのは、これらを使いこなすために専門的なプログラミング知識は一切不要だということです。スマートフォンやパソコンがあれば、誰でも今日から使い始めることができます。
学校現場で出会う3種類のAI。「専門知識は不要」がこのスライドの主題です。
2. 「常識が破壊される」瞬間を体験していただく

言葉で説明するより、体験していただくのが一番です。
3枚の人物写真をスクリーンに映し、「この中でAIが作ったものはどれでしょうか?」と会場に問いかけました。先生方から手が挙がり、意見が分かれます。
正解は――3枚とも、すべてAIが生成した画像です。
「もう見分けがつかない」という驚きの声が会場に広がりました。子どもたちが日常的に触れる情報の中に、すでにこうした生成物が紛れ込んでいる。この事実を実感していただくことが、ここでの狙いでした。
3. 歴史からわかる「第3の転換期」

ネット、スマホ、そしてAI。3度目の転換期の入り口に私たちはいます。
AIの登場は、突然変異ではありません。社会には大きな転換期が3度訪れています。
- 第1転換期:インターネット
- 第2転換期:スマートフォン
- 第3転換期:AI
インターネットもスマートフォンも、登場した当初は「必要ない」「難しそう」と言われました。しかし今、それらなしの学校運営は考えられません。AIもまた、同じ道を辿っています。私たちは今まさに、その転換期の入り口に立っています。
理由はシンプルで、子どもたちがすでに使い始めているからです。
そのうえで「なぜ今、教員こそAIを理解すべきなのか」をお話ししました。理由はシンプルで、子どもたちがすでに使い始めているからです。スマートフォンでAIに質問する子が確実に増えている今、指導する側が触れたこともない状態では、適切な指導も助言もできません。
4. 学校現場の課題とAIの可能性

後半は、いよいよ学校業務の話です。会場に一つ質問を投げかけました。
「AIに任せられる業務とは?」
9つのうち、任せてはいけないものはどれか。線引きの話です。
スクリーンに並べたのは、この9つです。
| 会議録作成 | 保護者通知文 | 学級通信 |
| 行事計画書作成 | 報告書要約 | 年間予定確認 |
| 式辞原稿作成 | 生徒へのヒアリング | 授業資料の作成 |
管理職の先生方にとって身近な業務ばかりですが、ここにはAIに任せてはいけないものも混ざっています。たとえば「生徒へのヒアリング」。子どもの表情を見て、言葉にならない気持ちを汲み取る――これは人にしかできない仕事です。
AIに任せるべきは、時間を奪っているのに価値を生みにくい作業。空いた時間を、子どもや先生方と向き合う時間に回す。この線引きこそが、AI活用の出発点だとお伝えしました。
5. その場でお見せした4つの実演

講演の後半では、実際にその場でAIを動かしてお見せしました。
① 学級通信を作る専用チャットボット
まずは多くの方が名前を知っているChatGPTから。ただ「学級通信を作って」と頼むだけでは、当たり障りのない文章しか返ってきません。
そこで、この研修会のために専用のチャットボットを自作して持参しました。起動すると、AI側から質問が始まります。
- 今月の学習内容で印象に残ったことは何ですか?
- 行事やイベントでの子どもたちの様子を教えてください
- 日常生活での様子を教えてください
- 来月の予定で、保護者に伝えておきたいことはありますか?
答えていくだけで、学校で実際に何があったのかを踏まえた学級通信が完成します。「担任からのメッセージ」欄には、次のような文章が生成されました。
日々の学校生活の中で、子どもたちの笑顔や優しさに元気をもらっています。保護者の皆様と力を合わせ、これからも子どもたちの成長を見守っていければと思います。
ポイントは、生成AIに「今の自分の状況」を伝えること。AIは万能な魔法ではなく、前提情報を渡して初めて、納得のいく答えを返してくれます。
② 会議の議事録を自動作成する
続いては、管理職の先生方が最も時間を取られる業務のひとつ、議事録です。
実はこの日、講演の冒頭から手元のスマートフォンでAIツール(AI Note)を起動し、40分間の音声を録音していました。その場で文字起こしを実行すると――
本日は教育研究所第2回の特別研修会を行わせていただきます。本日の司会を務めます、教育研究所の堀と申します。
冒頭のご挨拶が、そのまま文字として画面に並びます。しかもこのツールは話者を自動で聞き分けてくれるため、「参加者1」「参加者2」と発言者ごとに整理された状態で出力されます。会場からは驚きの声が上がりました。
③ 音声モードで、AIに相談する
3つ目は、ChatGPTの音声モードです。文章を打ち込むのではなく、AIと会話する使い方をお見せしました。
その場でAIに、今回の講演そのものについて相談してみました。「30~40名の先生方の前で、生成AIをテーマに100分話すことになったが、何を話せばいいか迷っている」と。
AIからは「講演の締めくくりに、その場で先生方の質問やリクエストに即興で答えるデモを入れると、『こんなこともできるんだ』と驚いてもらえて盛り上がりますよ」という提案が返ってきました。
文章で質問しようとすると「何を聞けばいいか分からない」という方が非常に多い。でも、会話ならスラスラ話せる。目の前に相談相手がいると思って、今の状況と悩みを口に出すだけで、解決策が返ってくる――この使い方を、ぜひ知っていただきたかったのです。
④ 口調は自由に変えられる
最後は少し遊びを入れて、AIの口調を「ギャル風」に変更する実演も行いました。堅い敬語も、くだけた話し方も、指示ひとつで自在に変わります。合わなければ、何度でも変えていい。AIは「正しく使う」ものではなく、自分に合わせて調整していくものだということを、笑いとともに感じていただけたと思います。
6. 最後は、全員がスマートフォンで体験

講演の締めくくりは、参加者全員のハンズオンです。
スクリーンにQRコードを映し、お手持ちのスマートフォンから読み取っていただきました。まだChatGPTを使ったことがないという先生方には、この場で登録まで進めていただきます。隣同士で教え合い、スタッフも席を回り、会場全体が一斉に手を動かす時間になりました。
あえてパソコンではなくスマートフォンで体験していただいたのには理由があります。子どもたちがAIに触れるのは、まずスマートフォンだからです。指導する側が同じ入り口を通っておくことに、意味があると考えました。
「機会がないと、なかなか登録まではしないと思うんです」――だからこそ、研修の時間の中にあえてその機会を組み込みました。
おわりに
AIは、先生方の仕事を奪うものではありません。事務作業に奪われていた時間を取り戻し、子どもたちと向き合う時間、先生同士が対話する時間を生み出すための道具です。
そして学校経営を担う立場の方がその可能性を理解しているかどうかで、学校全体の変化の速さは大きく変わります。今回、校長・副校長・主幹教諭の皆様が休日にお集まりになり、真剣にスマートフォンを操作される姿を拝見して、その手応えを強く感じました。
完璧を目指す必要はありません。まずは学級通信の下書き、会議の議事録、行事の企画案から。小さな一歩を、ぜひ月曜日から始めてみてください。
貴重な機会をいただきました東京都一水会・東京都一水教育研究所 教育経営部の皆様、そして会場をご提供いただきました千代田区立お茶の水小学校の皆様に、心より御礼申し上げます。
開催概要
| 項目 | 内容 |
| 日時 | 2025年11月8日(土)15:20~17:00 |
| 会場 | 千代田区立お茶の水小学校 |
| 主催 | 東京都一水会/東京都一水教育研究所 教育経営部 |
| 演題 | AIの進化に学校は、教員は目を覚まそう |
| 対象 | 小学校 校長・副校長・主幹教諭など 約50名 |
| 講師 | 株式会社SakAI Nexus 代表取締役 堺 彬 |
